ポスト・ヒューマンの魔術師

「自称人間」の時代からポスト・ヒューマンの時代へ。

クローン技術と生殖補助医療による性的パラドクスからの脱却

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概要

 ここでは、クローン技術と生殖補助医療が有効な「デザイン」であるということを、説明しておこう。まずは両技術の機能に簡略ながら触れておく。

クローン技術の機能

 クローン技術は、人間の単性生殖を可能にする。クローン技術の運用過程は、およそ次の通りだ。第一に、女性の卵細胞からその卵細胞核を除去する。第二に、除去した場所に任意の人間の体細胞の細胞核を移植する。第三に、発生から胚の構成まで待つ。第四に、その胚を任意の女性の胎内に移植する。そして第五に、妊娠から出産へと進行させる。ここで使用される体細胞は任意で構わない。したがって、必ずしも男性の体細胞である必要は無い。場合によっては、自らの体細胞を移植することもできよう。つまり、生殖に男性は不要となるのである。これまでの有性生殖では男性と女性の両者が必要ではあったが、クローン技術が解放されれば、女性のみで実行可能になるのだ。

生殖補助医療の機能

 生殖補助医療とは、不妊の夫婦を補助するための医療である。その方法として採用されているのは、別の女性による代理出産である。代理出産においては、まず精子を人工的に女性の体内に注入する方式を採る。それにより、人工授精を伴わせるのだ。一方で、体外で精子と卵子を受精させ、受精卵を子宮内に移植する体外受精という方法も選択肢として挙げられる。

同性愛者の「負担免除」としてのリプロダクティブ・クローニング

 一例を挙げておこう。レズビアンのカップルが血の繋がった子供を望む場合、リプロダクティブ・クローニングが有効な方法となる。無論精子を提供されれば、子供を授かることはできる。しかし、この方法では継承される遺伝子がカップルの一方に制約されてしまう。クローン技術は、このパラドクスを脱パラドクス化してくれる。カップルの遺伝子を継ぐ子供を一人ずつ産めば、レズビアンのカップルでも血の繋がった子供を産める訳だ(!)

ジェンダー・セクシュアリティ・セックスの脱パラドクス化

 こうした機能を前提とすれば、クローン技術と生殖補助医療は、性愛の必然性を破壊する。性的コミュニケーションの負担は、技術によって免除される訳だ。情熱的な愛を確かめ合うことの必然性も無くなるのである。性的コミュニケーションのパラドクスは、単性生殖によって脱パラドクス化されるのである。

 ここで述べている性的コミュニケーションのパラドクスとは、ジェンダー・セクシュアリティ・セックスの区分におけるパラドクスである。異性愛にせよ同性愛にせよ、互いに動物的な肉的欲求を満たし得るコミュニケーションを形式化させることが可能ではあったが、一方でそれが生殖行為であるということがネックだった。しかし、クローン技術や生殖補助医療は、<生殖行為>と<動物的欲求の充足>とを区別する。これらの技術が生殖の負担を免除することで、異性愛者にせよ同性愛者にせよ、生殖を気にもせずに動物的欲求の充足を追及できるという訳だ。

 セクシュアリティとセックスの区別に伴ったパラドクスについては特に、物の見事に脱パラドクス化できてしまう。もはやこうした技術の恩恵に浸れば、カップルの異性を生殖のパートナーとして選択することの必然性は解体する。カップルの一方は、カップルの他方よりも<優等>な遺伝子を持つ別の異性を選択することも、可能となる訳だ。利己的な遺伝子もさぞ喜ぶことであろう。ジェンダー、セクシュアリティ、そしてセックスの問題に長らく悩み続けてきた社会科学者たちには、トランス・ヒューマニズムへの仲間入りを推奨したいところだ。

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