ポスト・ヒューマンの魔術師

「自称人間」の時代からポスト・ヒューマンの時代へ。

更新履歴:『人類総動物化計画』序論にかえて

 初めに、第一章と第二章で述べたことを確認しておこう。そしてこの確認事項を前提として、「人類総動物化計画」に言及していくことにする。

『魔術書』と『境界侵犯』で語られた事柄

 前章で述べたように、「環境管理型権力」による人間の動物欲求を媒介とした無意識的なコントロールを確実的に実現させるためには、オートポイエティック・システムとしての脳システム意識システム社会的システムの構造に対して、破壊的相互作用を付与する必要がある。前章の考察から導かれた最も理想的な具体例は、「側頭葉てんかん」に基づく「自動症」をテクノロジカルな電気刺激によって誘発させることである。これに関しては、ワイルダー・ペンフィールドの有り難い御言葉が、我々に大いなる示唆を与えてくれている。すなわち、「意識の維持に不可欠な働きを営む上部脳幹の仕組みが、選択的に機能を失ってしまうてんかん発作もあるのだ!この発作は患者を『心のない自動人間』に変えてしまう」[1]とのことである。

 しかしこの電気刺激は、専ら脳システムと意識システムの構造に対する破壊的相互作用である。社会的システムの構造が破壊される保証は、確保されていない。たとえば、簡単に考えるだけでも、社会的システムの内部で機能的に分出した法システムならば、この電気刺激行為を科学的な犯罪であるとして棄却する可能性を例示できる。モラリストも黙っていないだろう。また学術システムは、こうした電気刺激の方法論的な陥穽に言及するかもしれない。したがって、脳システムと意識システムの構造に対する破壊的相互作用を付与するためには、社会的システムの構造をも破壊できる方法を採用しなければならない

 社会的システムを対象とした破壊的相互作用を実行に移すためには、社会的システムの自律的な自己再生産活動の継続を阻止する方法を模索する必要がある。私見によれば、こうして必要となる方法とは、「瞬時に全人類をエピレプシー化させること」を可能とする方法に他ならない。これが理想であろう。言うまでもなく、全人類の脳システムと意識システムが瞬時に破壊されれば、もはや社会的システムも機能を喪失する。如何なる免疫も、その役割を果たさない。全人類のエピレプシー化は、「環境管理型権力」の理想像なのだ。

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注釈

[1]  ワイルダー・ペンフィールド(著)、塚田裕三(訳)、山河宏(訳)『脳と心の正体』法政大学出版局(1987)、p81を参照。

この記事の前提となっている理論的考察

  1. ポスト・ヒューマンの哲学
  2. ポスト・ヒューマンの人間科学
  3. バイオ技術の「デザイン」
  4. メディア現実の「デザイン」
  5. 脳神経の「デザイン」
  6. ポスト・ヒューマンの生政治

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